これまでの100年、これからの100年

門屋光彦社長インタビュー

創業100年を超え、次の100年に向けて歩みだした門屋組。
100年を区切りに、門屋組のこれまでとこの先について、門屋光彦社長にインタビューを行いました。(2017年9月)

代表取締役に就任するまでの経緯を教えてください。

門屋組さんと言えば、“○”に“留”、「マル留」の社章が印象的です。

社長:初代・留一郎の名前から作られました。実は2代目・知照が就任する時に「マル知」に変えようかという話もあったそうですが、現会長で3代目である私の父・齊が思いとどまらせたと聞いています。

門屋組は「マル留」でないと、ということですね。

社長:そうですね。私は会社が創業100周年を迎えるときに4代目社長に就任しました。私にとっても「マル留」はずっとなじみのあるものでした。
ベンチャーなど創業者が健在な会社は、社長の声で一丸になると思うのですが、私は後継者ですからね。あくまでも「中継ぎ」です。次にバトンを受け渡す際、長い歴史を紡いでいくには一番初めの、創業者の精神を紡いでいくことが大事であると考えています。

受け継いでいくことが貴社の強みになっているのだと感じます。

社長:創業者の精神と社訓を貫くことが当社の強みになっていると考えています。創業者は「誠実一途」「顧客本位」という理念を掲げました。今の時代にあった誠実一途、顧客本位の考え方を事業計画に記し、この精神を普遍的なものとして受け継ぎ、一丸となって取り組んでいます。
それから社訓ですが、「満足していただこう」「信頼していただこう」に私が社長に就任する際、「感動していただこう」を追加させていただきました。

「感動していただこう」。言うには簡単ですが実現するには相当大変ですね。

社長:自分自身が信じたものに対して確固たるゆるぎない気持ちを持って臨むしかないと考えています。私としては、お客様だけではなく、社員にもその家族の方々も、協力会社も含めて「感動」していただけるように取り組んでいます。

具体的にはどんな取り組みをしていますか。

社長:社内では「健康経営」と銘打った取り組みを行っています。会社の存続は社員一人ひとりの力があってこそ成しえるものです。常に高パフォーマンスを維持し続けるには企業側が労働時間やモチベーション、やる気スイッチなんかも含めて色んなことを改善しなければならえないと考えています。
1つは「アニバーサリー休暇」というものを設けています。結婚、誕生日、お子さんが生まれた日など、人それぞれ様々な記念日があります。申請するとその人の記念日を休むことができる制度です。それから「リフレッシュ休暇」。現場によっては工期の問題で休みが取りにくい場合もありますから、工事が終わった後にまとめて休暇を取れるような制度を作りました。
加えて「健康」ということ観点から、年1回、社員全員に人間ドッグを受けてもらっています。さらに、社員の伴侶にも受けられるようにしています。全て会社が負担します。

奥さんの人間ドッグの費用もみてくれるんですか。手厚いですね。

社長:社員が高パフォーマンスを維持するためには、その人を支える伴侶も健康であることが大事ですから。こうしたことが「感動していただこう」につながると考えています。

今後の成長(発展)のために今取組んでいることは?

社外の人には。

社長:地域の人にも「感動していただこう」ということで、全社員で週一回、周辺地域の清掃を行っています。会社だけではありません。工事をさせて頂いている全ての現場で同じように周辺の清掃を行うようにしています。現場では、協力会社の方々にも協力してもらっています。一般的な工事現場は、仮囲いをしてシートを張り、中から車両が出入りするだけで近隣との関わりはあまりないわけですよ。私たちは地域があるからこそ会社が継続できる。そうした考えたから地域の人との関わりを少しでも増やしたい思い行っています。

近隣の人からの評判も良いのでは。

社長:ありがたいことに手紙をいただいたりして逆に私たちが感動してしまいます。掃除だけでなく、元気にあいさつをする、現場の近くに飲食店がある場合はそこに食べに行くようにするなど、1つ1つは小さいですが、人と人とのつながりや信頼の積み重ねが最終的には大切な気がしますね。

気づかいを大切にされていますね。

社長:現場では職場環境の維持改善のためのスローガンとして「3K活動」を掲げています。3Kというと良く言われるのは、汚い、きつい、危険です。これを何とか払拭できないかと考え、「気配り」「心掛け」「感謝」という門屋組独自の3Kを考案しました。
「8S運動」も一緒に掲げています。一般的な整理・整頓・清潔・清掃に、独自の「姿勢」「進化」「周知」「浸透」の4つを加えました。私が社長になった7年で1つずつ継ぎ足し、結果8Sになりました。

積み重ねが顧客から選ばれる理由なんでしょうね。他にも大切にしていることはありますか。

社長:選ばれるためではありませんが、心がけていることがあります。利益がでたら地域に還元するということです。自分たちが得たものは地域にお返しして少しでも経済を動かしていくお手伝いできればという考えからです。
お客様も建築工事を頼む相手とWin-Winの関係でいたいはず。そうすると、地域の活動に協賛したり、相手のことを考えたりしている会社を選ぶのではないかと思います。

まさに、地域密着経営ですね。

社長:地域に愛される、役立つ、頼られる、これがなければ会社の発展繁栄はないと思います。自分のことで精一杯な社員が何人もいたら長続きはしません。他人を重んじる人がひいては地域のことを考える人材になると思います。地域清掃も地域のことに目を向ける一環ですよね。地域密着はこれからも変えてはならないことです。

逆に変えなければならないものはありますか。

社長:たくさんありますよ。当社には、ムラ・ムリ・ムダなことがまだまだたくさんあります。例えば、時間の使い方、会議の仕方、会社の仕組みなど、1分1秒でも仕事の時間を減らし効率化を図っていくということは常に考え続けていかないとなりません。
これからAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)など、都会では導入が進められている最新のテクノロジーが地方でも徐々に浸透してくるでしょう。それをすべて都会と同じに合わせることは地方では難しいですが、最新情報は常に入手し、良いものはすぐに導入していなかければならないと考えています。
そうした変革の時に、社員の平均年齢が高いと逆にパフォーマンスが落ちてしまう恐れがあります。ここで重要なのがそうならない会社づくり、年配の人でも新たなことに挑戦できる環境づくりをしておかなければ、来るべく導入にも対応できないと考えています。

新しいことに挑戦する姿勢を持ってもらうためにどのようなことを行ってきたのですか。

社長:3代目の影響が大きいですね。私が帰ってきて最初に掲げた目標は、全社員一丸です。皆で新しい事を起こしたかったのですが、最初に始めようと思ったのが清掃活動でした。会長と私は47歳の差があります。半人前の私の意見はなかなか聞き入れてくれなかった。それでも食い下がらず訴え続ける中で、「お互いが中継ぎである」という考えに収まったのです。「創業者を、マル留を信じあろう」という結論に至った時に点と点が結ばれたような気がしました。
それからです。3代目が積極的に清掃に取り組んでくれました。社員にとっては自分よりもかなり年上の人が新しいことに挑戦しているのです。その姿に皆が心を打たれたのだと思います。社員の清掃に対する考え方が変わってきました。その後は消極的だった人たちも次第に新しいことに取り組んでくれるようになっていきました。

その会長を動かしたのは、社長の力なのでは。

社長:信じてくれたのではないかと。私がちゃらんぽらんで毎日遊び呆けていたらダメだったかもしれませんね(笑)。
その後は私がこうしたいということに協力的になってくれました。私が青年会議所という青年経済人で組織する団体などの活動で松山を離れることがありますが、その時にはしっかりと会長がフォローをしてくれます。二人三脚でやってくれるおかげで、うまく会社も回っていると思います。

創立200周年まであと